割竹の幅を均一に仕上げる ― 竹パネルづくりを支える巾引き加工の技術
/井上 定治竹定商店では、竹材を扱ううえで欠かせない工程のひとつに割竹の幅調整(巾引き加工)があります。 割竹は、竹を平行に割ったあと、まず鉋で表面を整えます。しかし、この段階ではまだ「幅の精度」が完成していません。
■ 巾引き加工とは?
巾引き加工とは、割竹の幅をミリ単位で正確に揃えるための仕上げ工程です。
竹パネルや竹の内装材を製作する際、複数の割竹を並べて組み上げますが、このとき幅の誤差は品質に直結します。
•ほんの少し細い
•ほんの少し太い
•わずかな反りがある
このような小さなズレが積み重なると、パネル全体の寸法が大きく狂ってしまいます。
■ 安定した品質のために欠かせない工程
竹は一本一本表情が異なる天然素材です。そのため、幅を均一に調整する技術は長年の経験を積んだ職人だからこそ成せる作業です。
竹定商店では、竹の癖を見極めながら丁寧に巾引きを行い、精度の高い竹パネルや内装材を安定供給できるよう仕上げています。
■ 動画で加工の様子を公開
今回のブログでは、実際に割竹の幅を整える巾引き加工の動画も公開しています。
竹がどのようにして均一な仕上がりへと整えられていくのか、ぜひご覧ください。
竹材の加工工程を知っていただくことで、竹という素材の奥深さや、職人の技術力がより伝わるかと思います。
その他のブログ
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嵐山の自社竹林で行う竹の伐採|竹材の品質を左右する「切り時」
竹定商店では、京都・嵐山にある自社竹林にて、毎年この時期に竹の伐採作業を行っています。 竹は一年中いつでも切れるように思われがちですが、実は「切り時」が非常に重要な素材です。 竹の伐採時期は「秋〜冬」が最適 竹の伐採は、秋から冬にかけての限られた期間に行うのが基本です。 この時期は竹の含水率が下がり、デンプン分も少なくなるため、 •腐りにくい •カビが発生しにくい •乾燥後の割れや変形が起こりにくい といった、竹材として理想的な状態になります。 反対に、春〜夏に伐採した竹は水分量が多く、劣化しやすいため、建築用・内装用としては不向きです。 嵐山産の竹が評価される理由 嵐山の竹林で育つ竹は、他地域の竹と比べて •繊維が詰まり、重く硬い •強度・耐久性に優れている •青竹として使用した際、経年変化で美しい白色へと変化する といった特徴があります。 その品質の高さから、著名な寺社仏閣や数寄屋建築では、嵐山産の竹を指定されるケースも少なくありません。 竹を傷めないための伐採方法 竹定商店では、伐採時の倒し方にも細心の注意を払っています。 竹を切る際は、株(根元)が搬出方向に向くように倒すことで、 •竹の運び出しがスムーズになる •地面や他の竹に当たって傷が付くリスクを軽減できる といったメリットがあります。 こうした一つひとつの工程が、最終的な竹材の品質に直結します。 竹定商店では、嵐山の自社竹林での管理・伐採から加工まで一貫して行うことで、 設計者・デザイナーの皆さまに安心して使っていただける竹材をお届けしています。/井上 定治 -
幅7cmの柾割竹を製作|職人の手仕事による竹材加工の現場
幅7cmと、やや大きめサイズの柾割竹(まさわりたけ)を制作しました。 今回仕上げた柾割竹は、長年お付き合いのある問屋様へ納品させていただきます。 今回のような幅広タイプは、施工後の存在感もあり、意匠性の高い空間づくりに適しています。 最終工程では、すべて手作業でバリ取りを行い、一本一本丁寧に仕上げていきます。 このひと手間があるかどうかで、手触りや見た目の美しさに大きな差が生まれます。機械加工だけでは出せない、職人の仕事ならではの仕上がりです。 竹は自然素材のため、同じものは二つとしてありません。 一本一本の状態を見極めながら丁寧に仕上げることが、長く美しく使っていただくための重要な工程だと、私たちは考えています。/井上 定治 -
竹建材で仕上げるホテルデザイン。宿泊施設の上質な和モダン空間へ
宿泊施設において、訪れた瞬間の“空気感”や仕上げ素材の印象は、滞在時間全体の満足度を左右します。 壁・天井・パーテーションなど、どの素材を選び、どのように見せるかは、ホテルのデザイン世界を形づくるカギです。 ここでは、竹建材を用いて“上質な和モダン空間”を実現した2つの宿泊施設事例をご紹介します。 素材の選定・施工・デザイン手法に着目しながら、竹建材がどのように宿泊体験を豊かにしているかを探ります。 事例紹介①:Nazuna 京都 椿通 様 京都市内にある「Nazuna 京都 椿通 様」では、平割竹を、天井から壁面へと一体的にまわす施工を実施いたしました。 「平割竹」とは、丸竹を幅均一に割り、両端をそろえて整えた竹材です。壁や天井など幅広く使用される加工方法ですが、こちらの事例では、ゆるやかに曲げた竹を“一本の流れ”として壁から天井まで展開しています。 さらに間接照明による照らし方が工夫されており、平割竹のラインが光と影を伴って浮かび上がることで「幻想的な雰囲気」を演出。 このように、素材自体を“見せる”デザインによって、玄関からリビング、そして寝室へと流れるように続く空間の中で、平割竹のラインが統一感と奥行きのある魅力を生み出しています。 施工事例はこちら > 事例紹介②:The Junei Kyoto 様 続いて、京都市内の宿泊施設「The Junei Kyoto 様」では、内装にひしぎ竹を採用いたしました。 ひしぎ竹は、丸竹に背割を入れ、専用道具で繊維に沿って打ち出すことで板状にした竹材で、ランダムな割れ目が特徴です。 アプローチ アプローチ部分では、ひしぎ竹を乳白色のアクリルの裏側に貼り、背後から照明を当てています。 光が竹の割れ目からやわらかく透けることで、入口に上品な明るさと落ち着いた雰囲気が生まれます。施設へ足を踏み入れる瞬間から、心地よい空気感を感じられる演出です。 施工事例はこちら > 客室 客室では、ひしぎ竹の割れ目がつくる自然なリズムが、空間にほどよい変化を与えています。 素材そのものに風合いがあるため、装飾を足しすぎなくても空間が自然とまとまり、すっきりと上質な印象に仕上がります。 さらに照明との相性もよく、光の加減や見る角度によって竹の陰影が変化し、落ち着いた空気感をいっそう引き立てます。 施工事例はこちら > それぞれの事例で見る“空間演出”の共通点 これら2つの事例には、宿泊施設の内装において素材が“ただ使われる”のではなく、“魅せられている”という共通点があります。 ・竹建材が壁・天井・アプローチ部など目に触れる主要な面に用いられ、宿泊者の第一視線に入ることを意図している。 ・照明や間接光との連動で、竹のラインや割れ目が陰影として強調されており、時間帯や動線に応じて表情が変わる空間が生まれている。 ・加工や素材の組み合わせによって、和の持つ柔らかさと現代的な洗練さの両立を図っている。 このような演出によって、宿泊施設は“ただ宿泊する場所”から“体験を得る場所”へと価値を高めています。 宿泊施設に竹建材を取り入れるメリット 竹建材を宿泊施設で採用することは、機能や効能ではなく、「空間の質を高めるための選択」として非常に理にかなっています。 ・ロビーに上品なアクセントをつくり、世界観を印象づける ・客室に落ち着きと統一感を与え、滞在者の視線が自然に整う ・廊下やパブリックスペースに静けさや余白をもたらす ・照明との相乗で陰影が美しく浮かび上がる ・和とモダンの両方に馴染むため、幅広いデザインに適応 “華美ではないのに上質”“自然素材なのに都会的”という絶妙なバランスを表現できる点が、竹建材の最大の魅力といえるでしょう。 まとめ 竹建材を活用した宿泊施設の内装は、素材そのものが空間を引き立てる力を持っています。 平割竹やひしぎ竹といった加工技術、光との連動、素材の流れや配置など、細部まで意図することで“上質な和モダン”という世界観を実現できます。 ロビー・客室・パブリックスペースなど用途を問わず、竹建材は宿泊施設のデザインに幅広く対応し、滞在者の印象に残る空間づくりを後押しします。 宿泊施設の空間設計・素材選定にお悩みの際は、お気軽にご相談ください。 素材の特性や仕上げ仕様、施工実例をもとに、あなたの施設に最適な竹建材の活用法をご一緒に考え、ご提案させていただきます。/竹定商店スタッフ -
10年前に施工した青竹の犬矢来を張り替え改修しました
10年前に当社が設置した青竹の犬矢来(いぬやらい)について、今回ご依頼をいただき、竹部分の張り替え改修を行いました。 ■ 犬矢来の状態と今回の施工内容 十年が経過していましたが、 骨組(下地・枠木)には大きな劣化がなく、構造は良好に維持されていました。 そのため今回は、 •青竹部分のみを新しく張り替え •既存の骨組はそのまま活かして再施工 という形で、コストを抑えつつ、美観を蘇らせる施工をご提案しました。 ■ 犬矢来は定期的な張り替えで美観が長持ちします 犬矢来は外部に設置されるため、 日射・雨風による変色や表面劣化が起きやすいです。 しかし、 •骨組を丁寧に作ること •定期的に竹のみを張り替えるメンテナンス を行えば、長期間にわたり美しい和の佇まいを保つことができます。 ■ 犬矢来の改修・新規設置について •部分張り替え •竹のみ交換 •新規製作・取付 •店舗・旅館・町家の外構デザイン相談 など犬矢来に関するご相談はお気軽にお問い合せください。/井上 定治 -
京都市内ホテルに、胡麻竹を使った当社オリジナル竹パネルをご採用いただきました
京都市内のホテルにて、当社オリジナルの胡麻竹パネルを採用していただきました。 今回製作したパネルは、胡麻竹の平割を両面削って板状に成形し、一定の角度で貼り合わせた立体的なデザインが特徴です。 竹の自然な風合いを活かしながら、上品な陰影が生まれるように設計された、当社独自の内装材です。 ■ 竹の“身”を見せる、珍しい仕上げ この竹パネルは、通常の竹製品とは大きく異なる表情を持っています。 理由は、両面を削り取っているため、竹の表皮を一切残していない点。 一般的に目にする竹材は、節や光沢のある外皮が中心ですが、このパネルでは 普段は目にすることのない「竹の身(み)」の部分をあえて前面に出しています。 竹の身には、まっすぐに伸びる繊細な繊維がぎゅっと詰まっており、光の角度によって柔らかく輝きます。 表皮とはまったく異なる、淡く滑らかな質感が生まれるため、内装材として非常に美しい存在感を放ちます。 ■ 胡麻竹ならではの自然な色味 同じ製法で白竹を加工した場合、身は淡いクリーム色に近い色味になります。 一方、今回使用した胡麻竹の繊維は、わずかに茶色味を帯びているため、落ち着いたトーンの上質な表情に仕上がります。 照明が当たると、細かな繊維が立体的な陰影をつくり、空間全体の雰囲気を柔らかく、かつ高級感ある印象に仕上げてくれます。/井上 定治 -
ゲストハウス外観に調和する黒竹のガスメーター・室外機カバー
京都市内のゲストハウスにて、特注仕様のガスメーターおよび室外機カバーを製作・設置させていただきました。建物全体の落ち着いた雰囲気に合わせ、外観に馴染むよう黒く塗装した平割竹を使用し、町家らしい端正な表情を損なうことなく設備機器を美しく隠すデザインとなっています。 黒塗装竹×町家外観の美しい調和 外観に使用した黒塗装の平割竹は、光の反射を抑えた深みのある質感が特徴で、焼杉や濃色の木部と相性がとても良く、建物の雰囲気を引き締めながら柔らかな陰影を生み出します。 竹の縦ラインが連続することでリズムが生まれ、通りに面したファサードに上質なアクセントを加えています。 機能性を備えた特注設計 ガスメーター、室外機、水道メーターなどの設備機器を隠しながら、メンテナンス性と通気性を確保する構造になっています。 特に水道メーター部分は、担当者がすぐに確認できるよう下部に蝶番を設けて開閉可能な仕様とし、日々の点検に支障が出ないよう配慮しています。 また、敷地の状況に合わせて高さ・角度を調整し、地面の傾斜にフィットするよう正確に製作しています。現場ごとに異なる条件へ柔軟に対応できるのは、竹を知り尽くした職人によるオーダーメイドならではです。 竹を使った外構・エクステリアのご相談も承ります 竹定商店では、今回のような設備カバー・竹垣・犬矢来・外構デザインなど、用途に応じて完全オーダーメイドで竹製品を製作しています。 平割竹、丸竹、塗装竹など、仕上げの種類も豊富にご用意しており、建物の雰囲気に合わせたご提案が可能です。 店舗・宿泊施設・住宅問わず、竹を活かした外観デザインをご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。/井上 定治 -
京都市内のホテルに、竹の曲線美を活かした特注アートワークを製作しました
京都市内のホテルよりご依頼をいただき、特注の竹アートワークを制作しました。 今回採用いただいたのは、竹を大きく曲げて花のような形状に仕立てたオブジェ。 しなやかに広がる竹のラインが空間にやわらかな動きを生み、ホテルエントランスの象徴的な存在として設置されます。 ■ 曲げ加工で生まれる、竹ならではの立体表現 写真のとおり、材料となる竹ヒゴは一本一本しっかりと曲げ加工を施し、同じ角度・同じラインを繰り返すことで、美しい放射状のフォルムを形成しています。 竹は本来、まっすぐで硬い素材。しかし、適切に割り、火曲げや水分調整を行うことで、ここまで大きなカーブを描く彫刻的な造形が可能になります。 竹の曲線美を最大限に引き出し、工房で丁寧に仕立てた竹パーツを組み上げていきました。 ■ 組紐(くみひも)がアクセントに 根元部分には、京都らしさを感じさせる組紐(くみひも)を巻き付け、上質さと強度を両立。 竹の自然な風合いと、組紐の精緻な意匠が調和し、ホテルの空間にふさわしいエレガントな仕上がりになっています。 ■ ホテル、商業施設、住空間向けのオーダーメイド竹アートも制作可能です 竹定商店では、今回のようなオーダーメイドの竹アートワーク・竹インスタレーションを多数制作しています。 • ホテルロビーのシンボルオブジェ • 商業施設の装飾パネル • 住宅・店舗のアートピース • 花器・照明・ブランド什器 など 空間に合わせたサイズ・デザインで一から製作が可能です。 ■ 竹の可能性を、もっと建築とアートへ 竹は軽量で強く、加工によってまったく違う表情を見せる素材です。 「曲げる」「割る」「編む」「積層する」といった技法を掛け合わせることで、建築・アート分野での可能性は大きく広がります。 京都の職人が生み出す竹の美しさを、ぜひ空間づくりに取り入れてみてください。/井上 定治 -
竹インテリアの魅力と竹建材がもたらす高級空間の演出
竹インテリアの魅力と、竹建材がもたらす高級空間の演出 近年、住まいづくりや店舗設計の分野で「竹」を用いたインテリアが注目を集めています。 自然素材の中でも竹は、木材とは異なる独自の質感や佇まいを持ち、空間に上品さと凛とした空気をもたらします。 本記事では、竹建材がどのように空間を演出し、どのような価値を加えるのかを、仕上がりの美しさやデザイン性という“空間的特徴”に絞って紹介します。 竹ならではの自然美と高級感 竹の最大の魅力は、その素材自体が放つ自然美にあります。竹の表面に現れるまっすぐな繊維のラインや節目は、天然が時間をかけて織りなした模様であり、一本として同じ表情がありません。 光の当て方や見る角度によって様々に表情を変えるその姿は、空間に奥行きと深みを与えます。 施工実績はこちら > 竹材を用いた天井意匠は、高級和風ダイニングや旅館のカウンター空間でよく見られる演出です。 画像のように竹を格子状に配した天井から入る光は、木漏れ日のような繊細な陰影を生み出してくれます。 竹の持つナチュラルな質感と直線美が調和し、高級空間に独特の奥行きと温もりを加えてくれる好例と言えるでしょう。 空間の“格”を上げるアクセント材として 部屋全体を竹で統一するのはもちろん、アクセントとして部分的に取り入れるだけでも空間に深みが生まれます。 竹のパーテーションで落ち着きと華やかさを両立 壁面に黒竹をアーチ状に設置し、上質で落ち着いた空間を演出 間接照明で竹を照らすことで、幻想的な雰囲気を演出 平割竹を天井や壁面の化粧材として採用 このような少しの工夫で、空間は一気に引き締まり、空間の印象に“格”が生まれます。建材としての主張が強すぎないため、インテリアに自然と調和する点も魅力です。 施工実績はこちら > 職人技が活きる繊細な仕上げ 竹建材は、仕上げによって表情が大きく変わる素材です。 たとえば、平割竹の柔軟性を活かして、壁から天井まで1本の竹を曲げて使用したり、平割竹のしなりを活かして波を表現したりと、職人の技術が活きる工程が多数あります。 その仕上がった内装には手仕事の温かみが宿り、“量産品にはない特別感”が生まれます。 近年は竹建材をインテリアで活用する事例も増え、住宅だけでなく、オフィスや商業施設でも採用が広がっています。 施工実績はこちら > 最後に:竹がつくるのは「素材の美しさが主役の空間」 竹建材を活用したインテリアは、その存在が空間を美しく引き立てます。 直線的な美しさ、自然素材ならではの温かみ、光と影がつくる繊細な表情、そして職人技がもたらす特別感。 これらが組み合わさることで、竹が演出する空間は“静かに、しかし確かな存在感”を放ちます。 住宅、店舗、ホテル、オフィスなど、用途を問わず採用しやすい竹建材。 高級感と落ち着きの両立を目指す空間づくりにおいて、竹はこれからも魅力的な選択肢です。 空間の印象を左右する素材選びは、どんな建物にとっても大切なプロセスです。 「どのように取り入れれば良いか」「どんな仕上がりが合うか」など、具体的なイメージづくりでお悩みの際は、お気軽にご相談ください。 空間にふさわしい竹の魅せ方をご提案いたします。/竹定商店スタッフ